1.7 流れをつくる

スマートウォッチというコンセプトは、かなり以前からありました。Apple Watchが発表される前から販売されているモノもあり、Apple Watchはあとを追う形でお披露目されました。

現在ではウォッチ単体で3G回線につながりブラウザ検索やメール・SNSのヤリトリができるモノ、GPSや加速度センサー・ジャイロセンサー・地磁気センサーを内蔵しているモノもあります。しかしこれらのメーカーの、機能てんこ盛りの製品を見ると、まずスマートウォッチという手段を前提としており、それで何をするのかという目的はあまり考えられていません。

それは新しいデバイスの世界観や魅力を、ゼロから自力で伝えなければならないということでもあります。さらに、それが何年にもわたって生活に溶け込み、続いていくのかという不安もあります。これが説明できないために多くのメーカーはスマートウォッチを普及させることができませんでした。

アップルはiPadを普及させる際にiPhoneの魅力を利用しましたが、同社にはiPod以来、既存製品を土台にしてそこから多段式ロケット(新製品)を発射させてシナジー効果を得るという基本戦略があります。MacからiPodにホップ、iPodからiPhoneにステップ、iPhoneからiPadにジャンプし、それぞれを成功させました。

このようなアップル製品の流れは「人々の生活を素晴らしく、人間らしく変える」という目的から手段を逆算していることに由来します。プロダクトアウト(技術を元に製品を作る)、マーケットイン(ニーズを元に製品を考える)のどちらでもありません。流れを作るためにアップルは常に「先端技術と実生活の交差点」を標榜しています。Apple WatchもiPhoneから発射される小型ロケットとして「人間らしい生活」という目的地を目指すことになるでしょう。

そのためには従来の時計とデザインを大きく変えずに、馴染み(既視感)を持ってもらわなければいけません。iWatchではなくApple Watchという名前にしたのはIT製品ではなく、あくま

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