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1.3 人間らしさへの回帰

Apple Watchの先輩であるiPhoneは、それ自体の普及によってモバイルインターネットを生活必需品に変えてきました。広い市場に浸透し「誰でも、いつでも使える」便利道具を作ったアップルでしたが、次第にこれらの道具の問題点と向き合わなければならなくなってきます。iPhoneは誰もが「いつまでも使ってしまう」道具になってしまったのです。

ここ数年で増えてきたのが、街中でiPhone画面を見ながら歩き、周囲に配慮できない人。クルマの運転中にメールチェックして事故を起こす人。家族や友人と同じ部屋にいても、みんながそれぞれの画面を覗き込んでいる。旅に出ても、楽しい想い出を記録するのではなく、ネットに投稿するために写真を撮っている。

電話やメッセージが着信した時、せっかくiPhoneを取り出したのだからと、別のアプリを開いてしまう。そんなことが続き、メッセージ確認だけのはずが10分も20分もiPhoneを使ってしまう。

アップルの新製品発表会では、いかに多くの利用者がiPhoneやiPadを使っているかを誇らしげに伝えたこともありましたが、こういった問題が社会現象になるのをきっかけに、情報とコミュニケーションする新しい方法が模索され始めました。アップルがApple Watchを開発した動機は、スマートフォンが人々を束縛し人生を台無しにしているという事実でした。

「いつまでも使ってしまう」というiPhoneの課題を解決することは、iPhoneの存在価値を否定することにつながります。しかし変化し続けるコミュニケーションに人間らしさを取り戻すには「スマートフォン・フリー(スマホを使わない)」の時間が大切だと考えたのでしょう。アップルには「複雑になったモノをシンプルにする」という得意技があります。そのためには時代に逆行したり、前言撤回することも少なくありません。

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